1.賃貸借契約の基礎知識

(1) 部屋さがしの流れ

【STEP1】  希望条件を整理する

入居したい時期、住みたい地域。住宅の種類、広さや間取りなど、いつ頃、どんな住まいに住みたいか整理します。

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【STEP2】  予算を決める

希望の住まいを借りるためのおおむねの相場を調べ、毎月支払うことのできる賃料、管理費(共益費)などを確認し、予算の目安 を立てます。
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【STEP3】  住まいを探す
インターネット検索や、不動産情報誌などから物件情報を集め、希望条件に合う物件を探します。

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【STEP4】  不動産会社を訪問する
希望条件に合った物件が見つかったら管理している不動産会社に問い合わせ、前もって見学の予約をします。そうすると不動産会社もスムーズな紹介等ができます。

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【STEP5】  物件を見学する
不動産会社の人に物件を案内してもらいます。その際、次の点に注意しましょう。
室内のチェックポイント
1.戸や窓の開閉、水を出す、歩き回るなど実際の生活でおこることをできるだけやってみます。
2.上階の音はどれくらい響くか、排水はどうかもチェックします。
3.持っている家具のサイズをメモしておき、メジャー持参でレイアウトを考えます。
チェックポイント
・日当たり、風通し
・窓からの景色
・防音
・収納スペース
・部屋の広さ、天井の高さ
・コンセントの数
・電話差し込み口
・TVアンテナ差し込み口

物件周辺のチェックポイント
不動産の表示規則では「徒歩の場合1分80m」で表示していますが、周辺施設までの距離、時間は自分で歩いて確かめましょう。
チェックポイント
・駐車場の場所
・買い物の利便性
・周辺の施設
・時間帯による道路の混雑

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【STEP6】  入居の申し込みをする

気に入った物件が見つかったら、所定の『入居申込書』に必要事項を記入し下記の提出書類を添えて申し込みます。

【個人契約の場合】
(申込者)
・入居予定者全員の住民票
・公的所得証明
・申込者の運転免許証の写し

(連帯保証人)
・印鑑証明書

《家賃債務保証会社利用の場合》
・入居申込書兼保証委託申込書
・個人情報の取扱いに関する同意書
・申込者の運転免許証の写し

【法人契約の場合】
(申込者)
・会社概要書または、商業登記簿謄本
・入居予定者全員の住民票
・入居者の運転免許証の写し
※ 場合により、家賃債務保証会社の保証を付けていただく場合があります。
その場合、
・商業登記簿謄本
・連帯保証人(法人の代表取締役)の運転免許証の写し

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【STEP7】  入居審査、契約前準備

入居審査の結果、入居できる場合、物件の説明を受けるとともに契約条件を確認します。そして、契約に向けた準備をします。

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【STEP8】  重要事項説明を受ける
不動産会社から物件や契約条件について説明を受けます。

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【STEP9】  賃貸借契約を結び入居する
物件や契約条件を確認し、必要な書類や費用の準備が整ったら、賃貸借契約を結び、鍵の引き渡しを受けます。鍵を受け取ったら、室内を点検して現況を確認します。

契約時の要チェック事項
・禁止事項
「ペット禁止」、「ピアノ禁止」等。守らない場合には退去させられることもある。

・特約事項
特別な条件を設定する条項。特約事項に条文がある場合は、必ず内容の確認をする。

・家賃の支払方法
大家さんに直接支払う場合と管理する不動産会社に支払う場合があります。
また、振込の場合と自動振替の場合があり ます。

・退去連絡
退去する場合の連絡は1ヶ月前というのがほとんどです。
退去連絡が遅れた場合は、ペナルティーが科される場合があります。

・その他
「契約の開始日」、「契約期間」、「契約の更新費用、賃料改定」「現状回復費用の負担」、
「契約解除」、「敷金の返還」等はしっかりと確認しておきましょう。

(2) 知っておきたい賃貸借用語

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礼 金(権利金)
貸主に住まいを貸してもらう謝意を表すものとして支払う費用です。新規契約の際、支払い、退去しても返却されません。礼金の取り扱いは地域の取引慣習のほか、周辺の市場動向によって変わります。最近は、「礼金なし」物件が増えています。

敷 金
借主の賃料の支払いその他賃貸借契約上の債務を担保する目的で新規契約時、貸主が借主から預かる金銭です。賃貸借契約終了後、明け渡しの際、借主に債務不履行がある時はその弁済に充当されその残額が返還されます。ただし、地域の取引慣習によっては、敷金の一部を返還しないことを条件としている地域もあります。(このような取り扱いは一般的に「敷引(しきびき)」といわれています)

共益費
階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等に当てるために借主が貸主に支払う費用です。区分所有建物等で共益費ではなく管理費の名目で支払う場合もあります。

前家賃
一般的に、賃料は翌月分を前払いします。そのため、契約には次回の賃料支払日まで日割計算した賃料を支払うことが一般的になっており、これを「前家賃」といいます。ただし、次回賃料支払日までの日数が少ない場合には、その翌月の賃料も合わせて支払うこともあります。

更新料
賃貸借契約の更新に際して、借主から貸主に支払われる費用です。更新料はあくまでも契約条件なので更新料がない場合もあります。金額は更新後の新賃料の1ケ月分という例が多いようです。

連帯保証人
借主の賃料不払いや、借主による建物の損壊等、借主が貸主に対して負う債務を担保する人的保証です。貸主は主たる債務者(借主)に債務不履行があれば、直ちに連帯保証人に対して保証債務の履行を求めることができます。

機関保証
親、知人等の自然人でなく法人その他の機関(家賃債務保証会社)が連帯保証人となり、借主が賃料を滞納した場合に、借主に代わって貸主に賃料を立て替えて支払います。保証会社により、保証される債務の内容、督促の方法、財務内容等の違いがあります。いずれの場合も、家賃債務保証会社の審査があり、それに通った場合のみ、債務保証契約を締結することができます。

フリーレント
入居後の一定期間(1~3ヶ月)の家賃を無料とする契約形態です。そうすることで貸主側からみれば少しでも早く空室を埋めることができます。また、借主側からみれば契約時の初期費用を抑えることができます。家賃を下げずに入居促進を図る方法として物件により取り入れられています。ただし、一定の期間内の解約には違約金やフリーレント期間の賃料の支払いを求める条項が盛り込まれている場合があります。契約内容の確認が大切です。

再契約型「定期借家契約」
普通借家契約と違い、定期借家契約は契約期間満了に伴い必ず契約が終了します。契約終了後、引き続き部屋を使用する場合は「再契約」を行う必要があります。この「再契約」を行うためのルールの設け方により、以下の3つに分類されます。
【非再契約型】
当初の契約期間満了で契約が終了し、再契約を一切行わないことを前提とする契約方式。
【再契約未定型】
契約期間満了後、再契約を行うかどうか定めず、その時に貸主、借主と”協議”して決める契約方式。
【再契約型】
契約期間満了後、原則的には契約違反や家賃滞納がないかぎり再契約することを大前提とした契約方式。
優良な入居者にとっては、従来の普通借家契約と何ら変わりません。再契約の際、敷金、礼金が改めてかかることもありません。かえって生活ルールやマナーを守らず近隣に迷惑をかける問題のある入居者を排除しやすくなるので、良好な住環境が保たれます。

敷引き
敷引きとは、退去時に入居時に預けた敷金から一定額を無条件で差し引くものです。主に関西方面で行われている慣習です。一般的には家賃の5ケ月分程度を差し入れ、敷引きできるのは住居の場合、家賃の2〜3.5ケ月までです。そして、残った敷金から原状回復費用が差し引かれます。

めやす賃料
賃貸住宅を借りる場合、賃料のほかに敷金、礼金、更新料等いろいろな費用がかかります。そしてそれらの負担は地域により異なります。そこでその把握を容易にし、トラブルを未然に防止するため共通の方法によって算定、表示される「めやす賃料」表示が日管協から提案されました。

めやす賃料は次の計算式により計算します。
めやす賃料=(4年間居住時の賃料、共益費・管理費+敷引金+礼金+更新料)÷48ヶ月

(3) 原状回復基礎知識

「原状回復義務」とは何か

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【原状回復義務条項】
建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了時には、賃借人は物件を「原状に回復して」明け渡さなければならない旨が規定されているのが通常です。
賃貸人がこの原状回復義務条項に基づいて、畳替え、クロス張替え、鍵の交換費用等の費用を原状回復費用として敷金から控除精算を行おうとした際、原状回復費用の対象となる範囲や金額を巡って賃借人が争う・・・ これが原状回復を巡る紛争の典型的な形です。
【裁判所の考え方】
裁判所は、「原状回復」とは①建物の通常損耗分をもとの状態に回復することではなく②賃借人の故意・過失等による劣化の回復を意味するとの判断を示してきました。 これは賃貸借契約の対象となる建物の価値は、そもそも時間の経過により減少するものであり、賃借人が物件を定められた使用方法に従って、社会通念上通常に使用していれば、賃貸借契約終了時に当初の状態よりも建物の価値が減価していたとしても、そのまま賃貸人に返還すればよい、という考え方に基づいています。
建物の通常損耗分は、賃貸人としては建物の減価が進行する過程で減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料に含めて支払いを受けて回収してきているので、原状回復の対象となるのは、賃借人の故意・過失等による劣化分ということです。

【ガイドラインの考え方】
ガイドライン(国土交通省平成23年8月再改定版)は、裁判所の考え方を取り入れて、原状回復は賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。

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賃借人の善管注意義務
賃借人は、賃借物を善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負っています(民法400条)。建物の賃借の場合には、建物の賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って建物を使用しなければなりません。日頃の通常の清掃や退去時の清掃は、賃借人の善管注意義務に含まれると考えられます。
賃借人が故意に、又は不注意で賃借物に対して通常の使用をした場合よりも大きな損耗・損傷等を生じさせた場合には、賃借人は善管注意義務違反によって損害を発生させたことになります。その場合、賃借人が原状回復義務を負い、その修繕費は賃借人が負担することになります。

原状回復費用負担の具体例
原状回復についての定義を前提にすれば、建物の経年劣化や賃借人の通常使用に基づく損耗は、賃借人の原状回復義務の範囲に入りません。つまり、そのような劣化分を回復するための修繕費等の費用は、それまで賃借人から受領してきた賃料の中に含まれていたわけですから、賃貸人が負担する必要があります。
他方、賃借人の故意・過失に基づく建物の劣化等は、賃借人の原状回復義務の対象であり、賃借人が費用を負担して原状回復をしなければなりません。

「原状回復のガイドライン」にみる賃貸人・賃借人の負担区分

「原状回復のガイドライン」にみる賃貸人・賃借人の負担区分

経過年数
賃借人の故意又は過失によって建物を毀損して賃借人が修繕費を負担しなければならない場合であっても、建物に発生する経年変化・通常損耗分は、既に賃借人は賃料として支払っています。明け渡し時に賃借人がこのような建物分まで負担しなければならないとすると、賃借人は経年変化・通常損耗分を二重に支払うことになってしまいます。
そこで、賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が長いほど負担割合を減少させることとするのが適当です。
経過年数による減価割合については、本来は個別に判断すべきですが、ガイドラインは目安として法人税法等による減価償却資産の考え方を採用することにしています。すなわち、減価償却資産ごとに定められた耐用年数で残存価値が1円となるような直線を描いて、経過年数により賃借人の負担を決定するのがガイドラインの考え方です。
なお、実務的には経過年数ではなく、入居年数で代替します(ただし、入居時点での資産の価値が既に減価しているいる場合は、減価したところがグラフの出発点です)。
なお、経過年数を超えた設備であっても、継続して賃貸住宅の設備として使用可能な場合(つまり、このような場合の当該設備の実際の残存価値は1円より高いということになります)、賃借人は実際の残存価値に相当する修繕費を負担する必要があります。
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特約について
賃貸借契約であっても、強行規定(例えば、借地借家法や消費者契約法の規定)に反しなければ、当事者の合意で特約を設けることができます。
ただし、最高裁は経年変化や通常損耗分の修繕義務を賃借人に負担させる特約について、賃借人が修繕費用を負担することになる通常損耗及び、経年変化の範囲を明確に理解していること。そしてそのことを合意したことが認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されてされていることが必要であるとの判断を示しています。
そのため、ガイドラインは借地借家法、消費者契約法等の趣旨や、最高裁の判例等をふまえ、原状回復に関する賃借人に不利な内容の特約については、次の要件を満たすことを要求しています。

① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意志表示をしていること