賃借人の原状回復義務の具体例
建物の経年劣化や賃借人の通常の使用による損耗は賃借人の原状回復義務の範囲には入りません。賃貸人が修繕費用を負担しなければいけません。それに対して賃借人の故意・過失(善管注意義務違反)による建物の劣化等は賃借人の原状回復義務の対象であり、賃借人が修繕費用を負担しなければいけません。具体的には次のようになります。
1.賃貸人負担となるもの
通常の住まい方で発生するもの
1.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
2.テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
3.壁に貼ったポスター等によるクロスの変色
4.日照などによるクロス・畳の変色、フローリングの色落ち
5.賃借人所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡
6.下地ボードの張り替えが不要な程度の画鋲・ピンの穴
7.設備・機器の故障・使用不能(機器の寿命によるもの)
建物の構造により発生するもの
1.構造的な欠陥により発生した畳の変色・フローリングの色落ち・網入りガラスの亀裂
次の入居者確保のために行うもの
1.特に破損等していないものの、次の入居者を確保するために行う畳の裏返し、表替え、網戸の交換、浴槽・風呂釜の取り替え、破損していない場合の鍵の交換
2.フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、賃借人が通常の清掃を行っている場合の専門業者によるハウスクリーニング・エアコン内部の洗浄
2.賃借人負担となるもの
手入れを怠ったもの
1.飲みこぼし等の手入れ不足によるカーペットのシミ
2.冷蔵庫下のサビを放置した床の汚損
3.日常の清掃を怠ったため付着した台所のスス・油
4.結露を放置して拡大したカビ・シミ
5.クーラーからの水漏れを賃借人が放置して発生した壁等の腐食
6.戸建て住宅の庭に生い茂った雑草の除去
用法違反
1.落書き等故意による毀損
2.ペットにより柱等にキズが生じ、または臭いが付着している場合
3.風呂・トイレ等の水垢、カビ等、日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
不注意によるもの
1.引っ越し作業等で生じた引っかきキズ
2.賃借人の不注意によるフローリングの色落ち
3.鍵の紛失または破損による取り替え
通常の使用とはいえないもの
1.喫煙によるヤニ等でクロスが変色したり臭いが付着している場合
2.重量物をかけるためにあけた壁等の釘穴・ビスで下地ボードの張り替えが必要なもの
3.天井に直接付けた照明器具の跡
参考情報
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
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