借主負担のクリーニング特約はどのような場合に有効ですか?

賃貸アパート退去時、借主が通常の清掃を行っていれば専門業者によるハウスクリーニング費用は貸主負担です。クリーニング費用が借主負担となるのは、「借主が通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合」です。このクリーニング費用を借主負担とする特約が付いている場合があります。どういう条件の場合、この特約が有効になるのでしょう。次の要件を満たす場合です。

目次

どのような場合に特約が有効になるのか

賃貸借契約であっても、強行規定(例えば、借地借家法や消費者契約法の規定)に反しなければ、契約自由の原則により当事者の合意で特約を設けることができます。

(最高裁の考え)

最高裁の判例では「建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて、その支払を受けることにより行われている。建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗及び経年変化について原状回復義務を負わせるのは賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる」。

そのため「経年変化や通常損耗分の修繕義務を賃借人に負担させる特約について、賃借人が負担することになる通常損耗及び、経年変化の範囲を明確に理解していること。そして、そのことを合意したことが認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であるとの判断を示しています。

(消費者契約法の考え)

また、消費者契約法では第9条1項1号で「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定」等について、平均的損害の額を超えるものその超える部分無効であること、第10条で「民法、商法」等による場合に比べ「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するもの無効とする」と規定されています。

(ガイドラインの考え)

そのため、ガイドラインは借地借家法、最高裁の判例、消費者契約法等の趣旨等をふまえ、借主負担のクリーニング特約等「原状回復に関する賃借人に不利な内容の特約」については、次の用件を満たすことを要求しています。

➀ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること。

② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。

③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。

以上3つの要件を満たしている特約であれば有効です。

契約する前に内容をよく確認しましょう。

参考情報

原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)

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