賃貸借契約前の注意点・要チェック事項

目次

入居申し込みに必要な書類

(1)個人契約の場合(連帯保証人を付ける場合)

入居申込書

所定の入居申込書に必要事項を記入し、押印します。

提出書類

申込者)

➀ 入居予定者全員の住民票

② 公的所得証明

③   申込者の運転免許証の写し

(連帯保証人)

➀ 印鑑証明

(2)個人契約の場合(保証会社の賃貸保証を付ける場合)

保証会社所定の入居申込書

必要事項を記入します。

提出書類

(申込者)

➀   申込者の運転免許証の写し

※ 審査の結果、連帯保証人が必要な場合があります。その場合、連帯保証人の印鑑証明が契約時に必要になります。

3.法人契約の場合

入居申込書

所定の入居申込書に必要事項を記入、押印します。

提出書類

申込者)

➀ 会社概要書または履歴事項全部証明書

② 入居予定者全員の住民票

③   申込者の運転免許証の写し

(連帯保証人)

➀ 印鑑証明

※ 場合により、連帯保証人の代わりに保証会社の保証を付けていただく場合があります。

その場合は

➀  履歴事項全部証明書

②  連帯保証人(法人の代表取締役)の運転免許証の写し

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入居申し込みの際、申込金を要求された場合の注意点

(1)申込金と手付金の違い

➀ 申込金とは

 「申込金」(正確には申込証拠金)とは「他に申し込みがあった場合に優先的に入居審査をしてもらう」目的で、不動産会社に契約締結前に支払うお金です。その金額は不動産会社によって異なりますが、家賃の1ケ月以内である場合が多いようです。また、申込金を支払っても必ず契約できる訳ではありません。(入居審査に不合格の場合は、契約出来ません)

「申込金」は不動産会社に一時的に預けるお金で、申し込みを撤回した場合、返還されるべきお金です。申し込みを撤回しても申込金が返還されないトラブルがありますが、不動産会社が「申込金」等の預り金の返還を拒否することは宅地建物取引業法で禁止されています宅地建物取引業法施行規則-第16条の12第2号

② 手付金とは

それに対して、「手付金」売買契約締結の際買主から売主に対して交付される金銭で売買代金の5~10%位の場合が多いようです。「手付金」について当事者間で明確な取り決めがない場合は、相手方に債務不履行がなくても相手方が履行に着手するまでならば契約を解除できる(解除権留保の手段としての)「解約手付」になります。

(2)申込金を払う時の注意点

申込金を不動産会社に預ける場合は、あくまで一時的に預けるだけの金銭であることを確認し、領収書ではなく必ず「預かり証」を受け取りましょう。

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(3)名称は違っても意味合いは同じ

申込金でなく「手付金」「内金」「予約金」などの名目で金銭の支払いを要求する不動産会社がありますが、契約締結前「申し込み順位の確保」の目的で預けたお金は、名目のを問わず「預り金」とみなされます。不動産会社から「手付金だから返せない」という説明で返還を拒否されトラブルになった場合は、不動産業者が加盟する業界団体または自治体の窓口に相談しましょう。

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賃貸借契約する前の要チェック事項

(1)重要事項説明て何 ?

重要事項説明とは、契約する前に宅地建物取引士が「物件の内容や賃貸条件、契約条件等」について借主に説明が宅地建物取引業法で義務付けられているものです。

(2)重要事項説明、賃貸借契約時の要チェック事項

賃貸借契約を結ぶと、以後はトラブルが起きた時は契約書にもとづいて行われます。入居者に不利な内容はないか、勘違いしていることは無いか確認しましょう。

下記の事項をチェックしましょう。

➀ 敷金返還を含めた退去時の原状回復条件

② 特約事項

よくある特約としては以下のようなものがあります。

(1) 退去時のルームクリーニング代を借主が負担する。

このことについて国土交通省の「原状回復のガイドライン」では契約書の中で貸主、借主が合意していることが求められています。

(2) 短期解約の場合の違約金

フリーレント等により入居月の家賃が免除された場合、短期(6ケ月~1年)解約した場合に、退去時に免除した家賃分を違約金として貸主に支払う特約が付く場合があります。

③ 禁止事項

「ペット禁止」、「ピアノ等楽器の演奏禁止」、「石油ストーブ使用禁止」、「事務所利用禁止」等が禁止事項になっている場合があります。守らない場合、退去させられることもあります。

④ 家賃の支払い方法

大家さんに直接支払う場合管理する不動産会社に支払う場合があります。また、「振込」の場合と「自動振替」の場合があります。

⑤ 緊急時の連絡先

設備の故障等があった時の連絡先が紹介してくれた不動産会社ではなく、別の管理会社だったり、大家さんだったりする場合があります。

⑥ 更新料・更新事務手数料

更新料がある物件と無い物件があります。ある場合は1ケ月が多いです。また、更新料とは別に更新事務手数料を不動産会社に支払わなければいけない場合もあります。

⑦ 退去連絡

退去する場合は1ケ月前というのが殆どです。退去連絡が遅れた場合は、連絡のあった日から1ケ月分の家賃を支払って解約になります。

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普通借家契約と定期借家契約の違いと特徴

(1)普通借家契約の特徴

契約方法   

書面でも口頭でも可です。通常は不動産業者が契約書を作成・交付します。

契約期間の上限

2000年3月1日より前の契約 ⇒ 20年

2000年3月1日以降の契約  ⇒ 無制限

1年未満の契約

期間の定めのない契約とみなされる。

更新の有無

原則として更新を拒絶する「正当事由」がない限り更新される。

賃料の増減

事情が変われば貸主と借主は賃料の額の増額や減額を請求できる。ただし、一定の期間、賃料を増額しない旨の特約がある場合はその定めに従う。

借主からの中途解約

中途解約に関する特約がある場合はその定めに従う。一般的には1ケ月前までに「解約申し入れ」をする特約が多い。

定期借家契約への切り替え

2000年3月1日より前の居住用建物賃貸借契約 ⇒ 借主と物件が変わらない場合は、切り替えできない。

事業用建物賃貸借契約 ⇒ 切り替えできる。

(2)定期借家契約の特徴

契約方法   

➀ 書面(公正証書等)による契約に限る。

②「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない。

貸し主がこの説明を怠った場合、その契約は定期借家としての効力はなくなり、普通借家契約になる。

契約期間の上限

無制限

1年未満の契約

1年未満の契約も有効

更新の有無

期間満了により終了し、更新はない(ただし、「再契約型」の場合は再契約可能)

再契約型「定期借家契約」の種類と特徴

契約終了後、引き続き部屋を使用する場合には「再契約」を行う必要があります。この「再契約」を行うためのルールの設け方により、次の3つに分類されます。

非再契約型

当初の契約期間満了で契約が終了し、「再契約を一切行わない」ことを前提とする契約方式。

再契約未定型

契約期間満了後、再契約を行うかどうか定めず、その時に貸主と借主が「協議」して決める方式。

再契約型

契約期間満了後、原則的には「契約違反や家賃滞納が無い限り再契約する」ことを大前提とした契約方式。

賃料の増減

賃料増減額請求権を排除できる(特約の定めに従う)。

借主からの中途解約

床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借主からは特約がなくても法律により1ケ月の猶予期間をおいて中途解約できる。

② ➀以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う。

契約終了時

契約期間が1年以上の場合貸主は期間満了の1年前から6ケ月前までの間に、借主に契約が終了することを通知しなければいけません。

貸主から契約終了通知がない場合、借主は貸主から同通知があった日から6ケ月を経過した日まで、契約期間中と同一条件で賃借することができます。

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借主負担のクリーニング特約の有効性

どのような場合に特約が有効になるのか

賃貸借契約であっても、強行規定(例えば、借地借家法や消費者契約法の規定)に反しなければ、契約自由の原則により当事者の合意で特約を設けることができます。

(最高裁の考え)

最高裁の判例では「建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて、その支払を受けることにより行われている。建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗及び経年変化について原状回復義務を負わせるのは賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる」。

そのため「経年変化や通常損耗分の修繕義務を賃借人に負担させる特約について、賃借人が負担することになる通常損耗及び、経年変化の範囲を明確に理解していること。そして、そのことを合意したことが認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であるとの判断を示しています。

(消費者契約法の考え)

また、消費者契約法では第9条1項1号で「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定」等について、平均的損害の額を超えるものその超える部分無効であること、第10条で「民法、商法」等による場合に比べ「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するもの無効とする」と規定されています。

(ガイドラインの考え)

そのため、ガイドラインは借地借家法、最高裁の判例、消費者契約法等の趣旨等をふまえ、借主負担のクリーニング特約等「原状回復に関する賃借人に不利な内容の特約」については、次の用件を満たすことを要求しています。

➀ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること。

② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。

③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること。

以上3つの要件を満たしている特約であれば有効です。

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民法(債権法)改正で、賃貸借契約の何がどう変わったか

(1)賃貸借契約により生ずる「債務の保証に関するルール」の見直し

個人が保証人になる根保証契約については、保証人が支払いの責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ保証契約は無効となります。

主債務者の「死亡」または保証人の「死亡」、「破産」等があった場合、個人根保証契約における主債務の元本は確定します。その後発生する主債務は保証の対象外となります。

(2)「賃借物の修繕に関する要件」の見直し

賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、または賃貸人がその旨を知ったのに賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしない時

急迫の事情がある時

(3)「賃貸不動産が譲渡された場合のルール」の明確化

賃貸借の対抗要件を備えていた場合に、賃借物である不動産が譲渡された時は賃貸人としての地位は原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転する。

不動産の譲受人(新たな所有者)が賃借人に対して賃料を請求するためには、賃借物である不動産の「所有権移転登記」が必要。

(4)「賃借人の原状回復義務及び収去義務等」の明確化

賃借人は賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこととし、しかし、「通常損耗」(通常の使用によって生じた損耗)及び「経年変化」については原状回復義務を負わない。

通常損耗・経年変化に当たる例当たらない例

(当たる例)

(5)「敷金に関するルール」の明確化

敷金とは「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対して生ずる金銭の給付を目的する債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」。

賃貸借契約終了後、貸主は敷金を返還しなければいけませんが、以下の費用については差し引くことが出来ます。

・借主の未払い賃料

・損害賠償金

・原状回復費用(補修特約の有無、内容で金額が変わります)

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