修繕費か資本的支出(減価償却費)かの判定はどうするの?
古くなり、賃貸住宅の建物、設備を修理、交換を行い経費を支出する場合があります。支出した経費が修繕費になるのか、資本的支出(減価償却費)になるのか税務上の扱いを確認しましょう。
取得と修繕費、資本的支出(減価償却費)の違い
賃貸住宅の建物、設備の修理等に支出した場合、➀固定資産の取得にあたるのか、②修繕費として経費(損金)処理できるのか、③資本的支出として資産計上すべきなのか判断が必要になります。修繕費であればその事業年度の費用として計上します。資産の「取得」や「資本的支出」であれば法定耐用年数にわたって減価償却費として費用計上します。
取得
建物の増築など量的な増加をもたらす支出は「取得」になります。原則として取得価格が10万円以上であれば「固定資産」になります。
修繕費
建物の外壁塗装、壁紙や床材の貼り替え、機械設備のメンテナンス等、修理の内容が「通常の維持管理、原状回復」であればその事業年度の費用として「修繕費」として計上できます。
資本的支出(減価償却費)
建物の修繕工事の内容によって、あるいは機械設備の高性能化によって法定耐用年数が延びるなど、固定資産の価値や性能、耐久性を向上させる修理・改良(質的増加をもたらす支出)であれば「資本的支出」として(資本的支出を行った建物と種類及び耐用年数を同じくする新たな資産を取得したものとして)法定耐用年数「主な減価償却資産の耐用年数表-国税庁」にわたって減価償却費てとして費用計上します。
建物の減価償却費の計算は定額法により、下記の計算式で計算します。
減価償却費 = 資本的支出した金額 × 償却率(耐用年数により変わる)
参照情報
修繕費と資本的支出の判定フロー
修繕費に該当するか、資本的支出に該当するか判断が難しい場合は下記の「形式基準」で判定することができます。
《1つの修理・改良のために要した費用の額》
①基準
20万円未満か
はい → 修繕費
いいえ ↓
①基準
概ね3年以内の周期で行われているか
はい → 修繕費
いいえ ↓
②基準
明らかに価値を高めるもの
はい → 資本的支出
いいえ ↓
または
②基準
耐久性を増すものである
はい → 資本的支出
いいえ ↓
②基準
通常の維持管理、原状回復費用である
はい → 修繕費
いいえ ↓
修繕費か資本的支出かどうか明らかでない場合
③基準
60万円未満である
はい → 修繕費
いいえ ↓
③基準
前期末取得価格の10%相当額以下である
はい → 修繕費
いいえ ↓
④基準
継続して、支出金額の30%相当額と前期末取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残りを資本的支出として処理している
はい ↓
支出金額の30%相当額と 前期末取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額
→ 修繕費
残りの金額 → 資本的支出
いいえ → 資本的支出
参照情報
形式的な区分による判定の具体例
(事例)
Aオーナーは取得価格1,000万円の賃貸住宅で、次のような修理を行いました。
修理、改良に支出した金額は下記のとおりです。
A修理 15万円
B修理 50万円
C修理 90万円
D修理 120万円
ステップ1
①基準 支出金額が20万円未満、または概ね3年以内の周期で行われている支出か判定します。
該当すれば「修繕費」として処理します。
・A修理は修理費が20万円未満なので➀基準により「修繕費」となります。
ステップ2
②基準 明らかに価値を高めるものまたは、耐久性を増すものであるである場合は「資本的支出」として処理します。
通常の維持管理、原状回復費用である場合は「修繕費」として処理します。
ステップ3
③基準 ステップ2処理後、修繕費か資本的支出か明らかでない場合は、(1)60万円未満である場合、(2)前期末取得価額の10%相当額以下である場合のいずれかに該当する場合は「修繕費」として処理します。
・B修理は修理費が60万円未満なので③基準(1)により「修繕費」となります。
・C修理は修理費が取得価額1000万円の10%100万円未満なので、③基準(2)により「修繕費」となります。
ステップ4
④基準 D修理は③基準(1)60万円未満である場合、(2)前期末取得価格の10%相当額以下である場合のいずれにも該当しません。
したがって、形式的に「修繕費」として処理することは出来ません。
Aオーナーが「継続して、支出金額の30%相当額と期末取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残りを資本的支出として処理している」場合は、いずれか少ない金額を「修繕費」として処理できます。
残りの金額を「資本的支出」で処理できます。
該当しない場合は「資本的支出」で処理します。
まとめ
支出した経費を「修繕費」で処理すべきか「資本的支出(減価償却費)」で処理すべきか分からない場合、税理士や税務署にアドバイスしてもらいましょう。
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